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特別受益と寄与分

1602240072.jpg   遺産分割協議や遺産分割調停、審判において、相続人からしばしばなされる主張として、特別受益と寄与分の問題があります。

特別受益や寄与分の主張がなされた場合、これらに該当するか否か、該当するとして、どの範囲・金額で認められるかによって、遺産分割協議の結果に大きな影響を与えることから、遺産分割を巡る紛争において主要な争点となるケースがよく見受けられます。

特別受益とは

特別受益とは、特別の相続人が被相続人から生前に受けた特別の利益のことをいいます。相続人のうちの1人だけ、生前に自宅の建築資金を出してもらった、マンションを買ってもらった、といった場合が典型例にあたります。

このような場合、
①まず、この特別受益を相続財産に加算したうえで、各共同相続人の相続分を確定する、
②そのうえで、特別受益を受けた相続人について、その特別受益額を①で確定した相続分から控除し残額をもってその者の相続分とすることにより、相続人間の公平を図ることが認められています。
 
例えば、被相続人の遺産が1億円で、相続人が兄弟2人であり、兄だけが生前に2000万円の贈与を受けていた場合、
 
みなし遺産:1億+2000万=1億2000万円
兄の相続分:1億2000万×1/2―2000万=4000万円
弟の相続分:1億2000万×1/2=6000万円

となります。
 

寄与分とは

これに対して、寄与分とは、相続人の中に、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者がいた場合に、この特別の寄与を考慮し、この者に法定相続分以上の財産を取得させることで、相続人間の実質的な公平を図る制度です。親の営む事業に従事して、財産を増加させた、あるいは親の介護をして介護費用の支出を抑えたなどの場合、寄与分が認められる可能性があります。

例えば、被相続人の遺産が1億円で、相続人が兄弟2人であり、兄が家業を手伝って、被相続人の財産形成に2000万円の寄与があった場合、
 
みなし遺産:1億―2000万=8000万円
兄の相続分:8000万×1/2+2000万=6000万円
弟の相続分:8000万×1/2=4000万円

 となります。
特別受益、寄与分ともに、どのような場合にどの範囲で認められるかについては、過去の裁判例・審判例や学説に照らした専門的判断が必要となりますので、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
 

特別受益が問題となる場合

特別受益については、以下のとおり、(1)特別受益者の範囲(2)特別受益の対象(3)特別受益の評価などの論点が問題となります。
 

(1)特別受益者の範囲

まず、特別受益の対象となる者ですが、共同相続人に限られるのが原則であり、共同相続人の親族に対して遺贈や贈与がなされても、原則として特別受益には該当しません(民法903条1項)。
 
しかし、名義上は共同相続人の親族に対する遺贈や贈与であっても、真実あるいは実質的には共同相続人に対する遺贈又は贈与であるといえるような場合には、例外的に特別受益と認められる場合があります。

例えば、被相続人が娘のAに婚姻に際し、自身が所有する土地の上にAとその夫Bが居住するための建物を建築してこれをBに贈与した場合、諸般の事情を考慮のうえ、相続人であるAの特別受益であるとした審判例があります。
 

(2) 特別受益の対象

特別受益の対象となるのは、「遺贈」及び「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として」なされた贈与です(民法903条1項)。この他、「相続させる」旨の遺言も、遺贈に準じて持戻計算の対象となります。
 
婚姻や養子縁組の際の持参金、支度金、結納金等は一般的に特別受益に当たりますが、贈与の価額が少額で、被相続人の生前の資産及び生活状況に照らして扶養義務の範囲内の支出と認められる場合は、特別受益に該当しないとするのが一般的です。挙式費用については、親の世間に対する社交上の出費としての性質が強いので、特別受益に当たらないと考えられます。
 
「生計の資本」としての贈与か否かは、贈与金額、贈与の趣旨などから判断し、生計の基礎として役立つような、相続分の前渡しと認められる程度に高額な金員の贈与であれば、原則として特別受益にあたります。

例えば、居住用の不動産の贈与、又はその取得のための金銭の贈与などが典型例ですが、相続人が事業を始める場合の資金援助としての贈与、相続人の事業の負債を被相続人が肩代わり弁済した場合なども、特別受益とされます。
 
学費については、大学・大学院・高等専門学校等の高等教育を受けるための学費や留学費用については、特別受益に該当する余地があります。ただし、被相続人の生前の資産状況、社会的地位に照らして、相続人に高等教育を受けさせることが扶養の一部であると認められる場合には、特別受益には当たらないとされます。

また、他の共同相続人との比較により、共同相続人全員が同程度の教育を受けている場合にも、特別受益に当たらないとしたり、持戻免除の黙示の意思表示が認められるとする扱いが一般的です。
 
不動産の無償使用のうち、被相続人の土地の上に相続人の一人が建物を建て、土地を無償で使用している場合には、通常、被相続人と相続人との間に土地の使用貸借契約があるものと認められますので、使用借権相当額が特別受益となり得ます。

他方、建物の無償使用の場合には、相続人の1人が長年、被相続人名義の建物に被相続人とともに同居していたような場合には、被相続人の財産が減少したわけではなく、特別受益には当たらないといえますが、被相続人とは同居せずに、被相続人名義の建物に無償で居住していたような場合には、通常、使用貸借契約があるものとして、特別受益が認められることがあります。被相続人名義の営業用不動産を無償使用してきた場合には、使用借権相当額あるいは使用期間に応じた賃料相当額の特別受益があるとされることが考えられます。
 
生命保険金については、被相続人の死亡を保険事故とする生命保険金請求権は、受取人と指定された者の固有の権利であり、相続財産には含まれない扱いであることから、原則として特別受益にはあたらないといえますが、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に著しい不公平が生じる特段の事情が存する場合には、民法903条1項の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象になると判示した最高裁決定があります(最決平成16年10月29日判時1884号41頁)。
 

(3) 特別受益の評価

ある財産について、生前贈与がなされた時点から相続開始時、さらに遺 産分割時までに長期間が経過していて、贈与された財産の価額に変動が生じているような事案において、特別受益の対象となる財産の評価をいつの時点を基準にしてなすべきかが問題となりますが、相続開始時において基準にして判断することとなります。
 
したがって、不動産の贈与については、相続開始時の時価を特別受益の額とするのが基本となります。相続人が、贈与を受けた不動産を相続開始以前に売却した場合でも、相続開始時にその土地を所有しているものと仮定して、特別受益の額を算定することになります(民法904条)。
 
また、金銭の贈与については、贈与時と相続開始時との貨幣価値の変動を考慮する必要がありますので、総務省統計局の消費者物価指数などを参考に、贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算した金額をもって評価すべきことになります。
 

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 相談弁護士 置田浩之

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